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名古屋高等裁判所 昭和40年(行コ)16号 判決 1967年8月29日

控訴人(被告) 伊勢都市計画復興土地区画整理事業施行者 三重県知事

被控訴人(原告) 西井安兵衛

主文

原判決中、控訴人の敗訴部分を取消す。

被控訴人の予備的請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人らは控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述証拠の提出、援用、書証の認否は左記に附加訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

(控訴代理人の陳述)

一、被控訴代理人らは、「本件仮換地指定処分の変更は、訴外井戸政信の個人的利益を図る目的をもつてなされたもので、訴外井戸の減歩率は右変更によりその標準を大きく下廻る一割七分強に減少し右訴外井戸が不当に大きな利益をうけた」旨主張するが、これはなんら根拠なき主張である。すなわち訴外井戸の仮換地前の所有地は、伊勢市一志町上一志一一一番地一九五・五三坪同所一一二番五九・六八坪、同所一一三番の一、一五・五一坪、同所一一五番の二、一五四・九三坪合計四二五・六五坪に対し、仮換地は三一六坪であるからいわゆる減歩率は約二割六分である。

一方被控訴人の仮換地前の所有地は伊勢市一志町一一一番の一、六三・三四坪、同所一二三番、四九・四四坪、同所一二一番一七・六二坪、同所一二二番一六二・三七坪合計二九二・七七坪に対し、仮換地は二二〇・八七坪であるからその減歩率は約二割五分であり、被控訴人の減歩率は訴外井戸のそれよりむしろ低いのである。

二、被控訴代理人らは、「本件変更処分は土地区画整理法第八九条所定の基準に反するような仮換地指定であるから違法である」旨主張する。しかしながら被控訴人の生活の本拠である伊勢市一志町一一一番の一の六三・三四坪に対しては仮換地六八・六〇坪を指定したのであるから地積からいえば被控訴人にとつてむしろ利益な仮換地である。またこれを場所的にみても右仮換地における従前の宅地のうち同市一志町一二二番四九・四四坪は被控訴人の住所(一一一番の一)とは離れた飛地でありその仮換地の一四坪もこれと同距離のものが指定されているのであつて、しかも被控訴人は現に同地上に建物を建設使用しているのである。したがつて本件変更処分は土地区画整理法第八九条に反するものではなく違法である。

三、被控訴代理人らの「被控訴人においてめん類加工品の乾燥場を建てようと考え、控訴人の出先機関伊勢都市計画復興事務所の了解を得た上自己所有の従前の宅地(二)、(三)を売却処分して資金を作り建設準備を了した」旨の主張事実は否認する。(二)、(三)の土地の売却は被控訴人の自由であり、控訴人又はその出先機関が右のごとき了解を与えたことはない。

四、なお原判決八枚目裏四行目より七行目にかけての「従前の宅地(四)を過少宅地として清算する旨の決定(以下「第二回変更決定」という)をなし昭和二八年一月六日付で原告に対しこれを縦覧するように通知した」との控訴人の答弁を撤回する。

五、本件仮換地変更に対して被控訴人より提出された正式の訴願は昭和三三年三月八日になされたのであるから法定期間経過後で不適法なものというべく、被控訴人の予備的請求は不適法である。

(被控訴代理人らの陳述)

一、控訴代理人の主張するとおり、訴外井戸の場合は最終の減歩率は二割六分弱であり、被控訴人の場合は最終処分で約二割五分という数字上の結果は出ているが、これは単に総合計による数字上の結論だけであり問題はその実質的内容である。昭和二七年一二月二二日付の変更決定によれば、当時の被控訴人の所有地は(1)一志町一一一番の一、六三・三四坪、(2)一志町一二三番四九・四四坪の二筆のみであり、これに対する権利地積は七八・九四坪とされていた。しかるに、同日決定された仮換地はこれを一〇坪余も下廻る六八・六六坪とされたのである。一方訴外井戸は同日現在所有する四筆の土地に対する権利地積二九七・九五坪に対してこれを約二〇坪も上廻る三一六坪の仮換地を得ているのである。両者の不公平はその当時において最も顕著であつた。しかも被控訴人が従前から与えられていた仮換地七九坪から減らされた一〇・三四坪の部分がそのままそつくり訴外井戸の仮換地に含まれ、その結果同訴外人の仮換地面積が従来よりなお七坪増(昭和二七年一二月二二日前は権利地積二九七・九五坪に対し二九九坪の仮換地をもらつていた)という結果になつたのである。

この処分が専ら訴外井戸の利益を図るためになされ、被控訴人の利益を完全にふみにじつたものであることは明らかである。

二、昭和三二年一二月二三日の最終処分により被控訴人は第一工区八番に一四坪という仮換地を得たのであるが、これは前回の変更処分を激しく抗議し、不満を訴えた結果、先にした不当処分を到底維持できなくなつた控訴人側が数字上だけの辻褄を合わせるために附加したものにすぎない。

控訴人は仮換地指定の基準とさるべき従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等に対する照応を全く無視し、角地とはいえ被控訴人の店舗住居から飛びはなれた位置に明らかに過少宅地である僅か一四坪という土地を与え口を拭わんとしたのである。

かような不当処分は伊勢都市計画復興土地区画整理審議会なるものの議決その他いかなる形式を整えようと、その不当性が正当化されるものではない。

三、なお、被控訴人が現在も店舗住宅を有している一志町一一一番の一宅地六三・三四坪は単なる登記簿上の地積であつて、仮換地六八・六〇坪の範囲はその従前の土地と実質において同一である。

結局従前の坪数は六八・六〇坪であつたことが明らかである。

控訴人は本件整理事業が登記簿上の面積のみを基準として換地指定がなされるものである旨主張するごとくであるが、施行者においてそのくい違いの事実が明らかであるような場合においては、いわゆる換地照応の精神からしても、実坪を基準とすべきことは当然であるといわなければならず、本件の場合従前地の登記面積六三・三四坪に対し、仮換地六八・六〇坪を渡したこと自体格別被控訴人にとつて利益になつたわけではない。

四、控訴人は被控訴人が前記仮換地一四坪上に建物を建設使用している旨主張しているが、さような事実はない。右地上に建つていた物置は第三者が不法に建築し土地を占拠していたものであり、これも被控訴人の抗議によつて撤去を完了し現在は空地の状況である。

五、控訴人は本件の仮換地指定の変更がすべて戦災復興都市計画再検討実施要領(昭和二四年六月二四日付)にもとずく公益上の必要によるものであると主張する。なるほど、右要領によると、なるべく在来道路および地下埋設物、河川、水路、鉄道および軌道を移設することのないように工夫し変更されることとされている。したがつて第一回変更(昭和二五年六月二日付)により、在来道路を活用するために旧道路部分につき与えられた仮換地(約一三坪と推定される)が減らされたことは納得できるところであり、被控訴人も異議はなかつた。しかし第二回および最終の変更処分は右の趣旨によつてなされたものではない。

前記要領によると、「換地予定地の指定を了した区域内においても現地換地又は当事者間の協議による借地契約の変更などにより極力建物の移転に伴う費用の節減を図る」旨が定められているが、その次の項には、換地設計の変更は出来うる限り変更個所を小範囲に止めるべきこと、及びこの変更によつて一部の関係の換地のみが増換地になることを避けるべきことが明記されている。

しかも右要領の基となつている昭和二四年六月二四日付閣議決定(戦災復興都市計画の再検討に関する基本方針)によれば、その第4項には「土地区画整理施行区域内において換地予定地の指定を了したもの、又は工事施行中のものについては原則として既定方針により施行するものとする」と定められているのである。本件係争土地のうち訴外井戸の旧所有地部分には古い病棟の一部(六畳)とトタン葺人力車置場という粗末な物件があつたのみであり、その移転は容易であり(訴外井戸の仮換地内には十分移の余地があつた)、ことさらに一度指定した仮換地の指定処分を変更して明らかに不公平な結果を招来させるような公益上の必要は考えられないのである。

しかも最終結果から明らかなように、訴外井戸の右建物の移転費用を節約しようとして被控訴人に対し本来与える必要のなかつた一四坪という保留地を与えざるを得なかつたということは、なんらの経費の節減の目的も果せなかつたことになる。

要するに、控訴人は医師会長を歴任していたという実力者訴外井戸の要請により同人の私益のみを図つた結果が無力であつた被控訴人に対し一方的な犠牲を強いた結果になつたものである。

(新立証)<省略>

理由

第一被控訴人の本位的請求について

一、被控訴人の所有にかかる(一)伊勢市一志町字上一志一一一番の一、宅地六三坪三合四勺(原判決添付図面トヘホヌリチトの各点を結ぶ線で囲まれた土地)(二)同町字下之久保一二一番宅地一七坪六合二勺(三)同字一二二番宅地一六二坪三合七勺(四)同字一二三番宅地四九坪四合四勺(以上合計二九二・七七坪以下従前の宅地(一)ないし(四)という)の各土地が控訴人の伊勢都市計画復興土地区画整理事業施行者として施行する土地区画整理事業の施行地区に属していたこと、控訴人が昭和二四年四月二六日従前の宅地(一)、(二)、(四)に対し一括して第一工区二七番九八坪(原判決添付図面(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(イ)点を順次直線で結ぶ範囲内の土地)を、従前の宅地(三)に対し第一工区三一番一二四坪をそれぞれ換地予定地に指定し(以下「最初の指定処分」という)これを被控訴人に通知したこと、控訴人が昭和三三年一月一一日「最初の指定処分」を変更し、従前の宅地(一)に対し第一工区二七番六八坪六合(原判決添付図面(ヘ)、(ホ)、(ヌ)、(リ)、(チ)、(ト)、(ヘ)点を順次直線で結んだ範囲内の土地)を、従前の宅地(四)に対し第一工区八番一四坪をそれぞれ仮換地に指定する処分(以下「本件変更処分」という)をして、これを被控訴人に通知したこと、以上の各事実は当事者間に争のないところである。

二、被控訴代理人らは

(1)  最切の指定処分は当時すでに確定していたから変更は許されない。仮りに変更が許されるとしても、公益上特段の必要のある場合に限るのに公益上の必要が存在しないにもかかわらず訴外井戸政信の個人的利益を図る目的でなされた本件変更処分は違法である。

(2)  本件変更処分は土地区画整理法第八九条の基準に反するものであるから違法である。

と主張し、本件変更処分を無効である旨争うから、本件変更処分が違法であるか否かにつき逐次検討する。

(一) 換地予定地変更指定処分の性質および行政処分の形式的確定力については、当裁判所も原判決と同一見解であるから、原判決のこの部分についての説示(原判決一一枚目表三行目より裏八行目まで)をここに引用する。

仮換地指定処分は工事完了後における換地処分とは異なり土地区画整理事業の必要上行われる暫定的処分にすぎず、その変更はもとより許されるべきものであることは多言を要しない。しかしながら、仮換地指定処分といえども、その効力として従前の宅地所有者その他の関係者に対し義務ないし不利益を与える反面、権利ないし利益をも与えるものである。従つて原処分の変更はすでに仮換地指定をうけた者及びその他の利害関係人の既得権ないし利益を侵害する筋合であるからその変更の許されるのは、公益上特段の必要ある場合に限ると解するのが相当である。

(二) そこで本件変更処分が公益上特段の必要があつてなされたものか否かについて考察する。

控訴人が本件変更処分に伴い、本件係争地の仮換地指定を被控訴人から訴外井戸に変更したこと、訴外井戸所有の従前の宅地は一志町字上一志一一一番、一一二番、一一三番の一、一一五番の二の四筆合計四二五坪六合五勺であること、同訴外人が右土地につき当初換地予定地として第一工区二九番二九九坪の指定をうけたことは当事者間に争のないところである。そして成立に争のない甲第一号証の一、二、第二号証、第一三号証、第一五、第一六号証の各一ないし五、第一七号証、乙第一号証、検甲第二号証の一、二、第三号証の一、二、第四号証、原審証人喜早俊次郎、同丹羽憲治、同後藤嘉一、同西岡卓二、同西井すみ子、同西井きのゑ、同西井雄吉、同井戸政信の各証言、原審(第一、二回)並びに当審証人牧侖之輔、当審証人佐野昌男の各証言、被控訴本人の原審並びに当審における尋問の結果(後記各措信し得ない部分をのぞく)原審(第一、二回)並びに当審検証の結果と弁論の全趣旨を綜合すれば、次の事実が認められる。

1、被控訴人は肩書居宅兼店舖において精米業を営んでいたが、配給統制で廃業後昭和一五年頃から製めん業にきりかえ、製めん機六台を据え付けてめん類の製造加工に当り、昭和二七年からは副次的に精米業を復活して現在に至つたものである。ところが被控訴人方建物は前記宅地(一)一杯に建てられていて空地なく、保健所から被控訴人は設備改善の勧告をうけても手狭まのため改善に着手できず困惑していたところ、偶々本件「最初の指定処分」により本件係争地(約一〇坪四合)を換地予定地に指定された。そこで、被控訴人としては右の指定を喜び一日も早く同地上にある訴外井戸所有建物を除却して換地予定地使用開始の通知がなされるよう要望陳情するかたわら、ここに二階建の建物をたてて階下を製めん工場に、階上をめん類乾燥場にあてる設計をたて建設資金をうるため昭和二五年一一月一一日従前の宅地(二)(三)を他に売却処分し、その代金約一九万円のほか一〇万円を用意して必要な資材を買いととのえて本件係争地明渡の日をまつていた。

2、しかるに、最初の指定処分の後、昭和二四年六月二四日に至り、土地区画整理事業費大巾節減の閣議決定があり、控訴人において区画整理事業施行地全域にわたり事業計画の変更に迫られる一方、電電公社から従前の宅地(一)の表を通る計画街路二等大路(外宮、常盤線、巾員一五ないし一八メートル)の北側にある旧道路敷には電柱電らんなどの電信施設がありこれを民有地に換地せず計画街路の道路敷とするよう要望があつたので、旧道路敷を右計画街路の歩道部分とするように事業計画を変更し、最初の指定処分による換地予定地第一工区二七番九八坪の南側部分一九坪(原判決添付の別紙図面(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヘ)、(ハ)点を順次直線で結ぶ範囲内の土地)を右歩道部分に取り込むに至り、昭和二五年六月二日付で従前の宅地(一)の換地予定地を第一工区二七番七九坪と変更指定する旨の第一回変更決定をなし、被控訴人にその縦覧方を通知した。

3、被控訴人の換地予定地第一工区二七番には「最初の指定処分」以来本件係争地(約一〇坪四合)が含まれていたが、ここには訴外井戸政信経営の井戸病院の非戦災建物が建つていて病室、給食、給水設備、洗濯場などの施設が存在し、控訴人は事業費節減の趣旨より従前の境界を尊重して昭和二七年一二月二二日本件係争地を被控訴人の換地予定地から削除するとともに、従前の宅地(四)を過少宅地として清算する旨の第二回変更決定をなし、昭和二八年一月六日付で被控訴人に対しこれを縦覧するよう通知した。

ところが、被控訴人は右変更を不服として本件係争地を自己の換地予定地に指定するよう陳情したので、控訴人において更に検討した結果、従前の宅地(四)の清算をとりやめ、新たに第一工区八番一四坪をその仮換地に指定することとし、伊勢都市計画復興土地区画整理審議会の諮問を得て昭和三二年一二月二三日本件変更処分決定をなし昭和三三年一月一一日被控訴人に通知した。(仮換地指定変更の経過は別表のとおり)

以上の各事実が認められ、原審証人西井すみ子、同西井きのゑ、同西井雄吉の各証言、被控訴本人の原審並びに当審における尋問の結果中右認定に反する部分はいずれも措信しがたい。

右認定事実によれば、本件変更処分は土地区画整理事業の方針変更の閣議にもとずく事業費節減のためになされたものというべく、公益上特段の必要性があつたと認められる。

(三) 被控訴代理人らは本件変更処分は訴外井戸の個人的利益を図る目的でなされたものである旨主張する。

しかしながら前記争のない事案より勘案すると

1、訴外井戸の仮換地前の所有地伊勢市一志町上一志一一一番地一九五・五三坪、同所一一二番五九・六八坪、同所一一三番の一、一五・五一坪、同所一一五番の二、一五四・九三坪合計四二五・六五坪に対し仮換地は三一六坪でその減歩率は約二割六分であること

2、被控訴人の仮換地前の所有地伊勢市一志町一一一番の一、六三・三四坪(実測六八・六〇坪)、同所一二三番四九・四四坪、同所一二一番一七・六二坪、同所一二二番一六二・三七坪、合計二九二・七七坪に対し、仮換地は二二〇・八七坪で減歩率は約二割五分であること(一一一番の一を実測地積によつても減歩率は殆んどかわらない)

がそれぞれ認められ、被控訴人の減歩率は訴外井戸のそれよりもむしろ低いというべきである。

この点に関し被控訴代理人らは本件変更処分当時の被控訴人の所有地二筆についての減歩率をとらえ訴外井戸のそれと比較して不公平であると主張するが区画整理事業は継続してなされるものであることはいうまでもないし個人所有地は各個人ごとに一体として考え不公平なきを期するものであるから、偶々被控訴人が所有地の一部を売却したからといつて残つた部分についてのみ減歩率を比較しようとするのは公平の原則よりみて失当というべきである。

被控訴代理人らは、さらに控訴代理人ら主張の閣議決定には換地予定地の指定を了したもの又は工事施行中のものについては原則として既定方針により施行するものとする旨定められているから、本件変更処分は公益上の必要を欠く旨主張する。

しかしながら右閣議決定は事業費節減のために土地区画整理事業の大巾削減を目的とするものであることは乙第一号証に徴し明らかなところである。しかしながら換地予定地指定ずみのもの又は工事施行中のものにまで右原則を及ぼすときは混乱を生ずるおそれがあるので、これらの場合には例外として既定方針に従う旨を定めたものと解せられる。(右閣議決定の根本方針4には「原則として」という用語が使用されているが、これは右根本方針の原則を意味するものでないことは文言上明らかである。)また右根本方針にもとずく戦災復興都市計画再検討実施要領には「換地予定地の指定を了した区域においても、現地換地又は当事者の協議による借地契約の変更などにより極力建物の移転に伴う費用の節減を図る」旨が明示せられている。これらの点から考えると、換地予定地の指定をうけた土地であつても、極力建物移転の費用の節減を図ることこそ根本方針に添うものと解せられ、右根本方針にもとずく再検討実施要領に従つた控訴人の措置を目して違法といいえないこと明らかである。要するに被控訴代理人らの主張は原則と例外を転倒した議論であつて到底採用できない。

(四) 被控訴代理人らは本件変更処分は土地区画整理法第八九条所定の基準に反し違法である旨主張する。

なるほど同法条には「換地及び従前の宅地の位置、地積、土質水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない」と規定されている。被控訴人に対する本件仮換地のうち上一志一一一番の一の仮換地は被控訴人の所有家屋の敷地で従前の土地(一)と同一であり、下之久保一二三番の仮換地(一四坪)については前記認定のとおり控訴人において被控訴人の陳情をうけて土地区画整理審議会の諮問を経て追加指定したものであつて、原審検証(第一回)の結果によれば、右一四坪は飛地とはいえ角地でもあり「当初の指定処分」における一一一番の一と合体した従前の土地一二三番四九・四四坪と被控訴人の住居(一一一番の一)との距離とほゞ同じ位の位置にあることが認められ、右従前の土地一二三番の仮換地として被控訴人に不利益を与えるものとは称し得ないから、被控訴代理人らの右主張も採用できない。

よつて本件変更処分が違法なることを前提としこれが無効確認を求める被控訴人の本位的請求は失当として棄却を免れない。

第二被控訴人の予備的請求について

控訴人の本案前の抗弁については、当裁判所も本件変更処分に対する訴願は適法であり、従つて本訴予備的請求も適法であると解し、控訴人の本案前の抗弁は失当であると考える。その理由は原判決の説示と同一であるから原判決の右理由記載(一八枚目表一二行目より二一枚目表一行目まで)をここに引用する。

そして控訴人の本件変更処分が違法と認められないことは前段説示のとおりであるから行政処分の取消原因ある場合に当らないこというまでもなく、被控訴人の予備的請求も失当として棄却すべきである。

以上の次第ゆえ、右と結論を異にする原判決は維持できないから民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 成田薫 布谷憲治 黒木美朝)

(別紙省略)

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